GFS-NUM-002: 数列を“群”で読むという試み

IQテスト


はじめに

これまでの数列問題では、漸化式や明示式など「一項ずつの関係」を中心に分析されることが一般的でした。しかし実際には、数列全体を複数項ごとの「かたまり(群)」として捉えなければ解けない構造を持つ問題も多く存在します。

このような問題は、一見すると規則性が見えにくいものの、構造的な視点を取り入れることで本質が明らかになります。特に「数列の区切り方」や「数字の桁構造」を意識的に操作することで、新たな解釈が可能となります。

本記事では、そのような 漸化式や単調変化に頼らない、より複雑で多段的な数列構造 に注目し、いくつかの例題を通じてその発想と解法のプロセスを紹介していきます。

※掲載する問題はすべてオリジナル構成であり、特定の知能検査問題を引用・模倣したものではありません。

数列の分類的アプローチ

以下各設問において考えるべき数列を\(a_n(n=1,\ 2,\ 3,\ldots)\)とおきます。

分類1:数列自体を区切る方法(ブロック構造)

Maksimが顎に手を当てて目を閉じ、構造を内省している様子。数列の背後にあるブロック規則を静かに分析中。
「その並びは関数か、それとも構文か」──数列の群構造を見抜くために。

例題:

1, 2, 3, 2, 6, 12, 4, 18, ?

考え方:

この数列は、3つずつのブロックに分けて考えると、各位置に異なる規則があるように見えます。

ブロック内の位置によって、以下のように定義できます。

\[
a_n =
\begin{cases}
2^{k-1} & \text{if } n = 3k – 2 \\
2 \cdot 3^{k-1} & \text{if } n = 3k – 1 \\
3 \cdot 4^{k-1} & \text{if } n = 3k
\end{cases}
\]

ただし、\(k = 1, 2, 3, \ldots\) とします(以下同様)。

解答:48


分類2:数値を桁で分割して考える方法(結合構造)

Maksimが黒板を指さしながら、数の桁構造の組み合わせについて静かに示している。
「2つの列は融合して、新たな言語を生む」──桁と数列の結合構造。

例題:

23, 49, 827, 1681, ?

考え方:

この数列では、各項を2つの部分\(a_{n,1},\ a_{n,2}\)に分け、それぞれを別の規則で生成してから、結合して1つの数として扱います。今回の場合は初項を各位で区切り、初項の十の位を\(a_{1,1}=2\)、一の位を\(a_{2,1}=3\)と定義します。このとき各数列の一般式は

\[
a_{n,1} = 2^n,\quad a_{n,2} = 3^n
\]

となり、たとえば次のようになります。

\[
\begin{align*}
a_1 &= (2,\ 3) \to 23,\\
a_2 &= (4,\ 9) \to 49,\\
a_3 &= (8,\ 27) \to 827,\\
a_4 &= (16,\ 81) \to 1681,\\
a_5 &= (32,\ 243) \to 32243.
\end{align*}
\]

解答:32243


分類3:演算子と数値をセットで考える方法(操作列構造)

Maksimが書を前に、目を閉じて演算子の組み合わせについて内面で処理している。周囲には+,−,×,÷が浮かぶ。
「演算は祈りのように、静かに構造を刻む」──操作列による内的再帰の世界。

例題:

1, 2, -1, -5, -5/7, ?

考え方:

この数列では、各項が前の項に対して特定の演算と数値を適用することで生成されています。

まず、演算子列 \(\sharp_n \)を次のように定義します。

\[
\sharp_n =
\begin{cases}
+ & \text{if } n = 4k – 2 \\
– & \text{if } n = 4k – 1 \\
\times & \text{if } n = 4k \\
\div & \text{if } n = 4k + 1
\end{cases}
\]

次に、操作対象の数列 \(b_n\)を以下のように定めます。

\[
b_n = 2n – 3
\]

初項は \(a_1 = 1\)とし、再帰式は次のようになります。

\[
a_n = a_{n-1} \ \sharp_n\ b_n
\]

これを順に適用すると、次のように求まります。

\[
\begin{align*}
a_2 &= 1 + 1= 2\\
a_3 &= 2-3= -1\\
a_4 &= -1 \times 5 = -5\\
a_5 &= -5 \div 7 = -5/7\\
a_6 &= -5/7 + 9 = 58/7
\end{align*}
\]

解答:58/7

練習問題

Maksimが正面を静かに見据え、机上の数列問題に取り組む構えを見せている。
「さあ、あなたの構造はどこにある?」──挑戦が始まる瞬間。

以下の問題は、分類1(漸化構造)、分類2(結合列・多項列)、分類3(演算子構造)に基づいて構成されています。各問題は、IQテストや論理構成問題において実践的思考力を鍛える目的で設計されています。

問題

  1. 2, 3, 3, 7, 5, ?, ?, 55
  2. 31, 43, 55, 67, 79, 811, ?, 1015
  3. 3, 5, 2, 7, 0, 11, -2, ?
  4. 12, 13, 35, 58, 78, 923, ?, ?
  5. 1/2, 1/3, 2/5, 3/7, 5/11, 8/13, 13/17, ?

解答と略解

※以下の解説中では「mod」という記法を使用します。これは「剰余算(modulo)」を意味し、
例えば「\(n \equiv 1 \ (\mathrm{mod}\ 2) \)」とは「\(n\) を 2 で割った余りが 1 である」ことを表します。
つまり、\(n \)が奇数であることを示します。

問題1:2, 3, 3, 7, 5, ?, ?, 55

解答:19, 9
分類1:漸化式型
この数列は、奇数番目と偶数番目で異なる漸化式に従います。

\[
a_n =
\begin{cases}
2a_{n-1} – 1 & \text{if } n \equiv 1 \ (\mathrm{mod}\ 2) \\
3a_{n-1} – 2 & \text{if } n \equiv 0 \ (\mathrm{mod}\ 2)
\end{cases}
\]

項のインデックスによって分岐する規則性を見抜くことが鍵です。

問題2:31, 43, 55, 67, 79, 811, ?, 1015

解答:913
分類2:結合型構造
各項は、2つの部分数列
\[
a_{n,1} = n +2,\ a_{n,2} = 2n -1 \]
を結合して得られます。

問題3:3, 5, 2, 7, 0, 11, -2, ?

解答:15
分類3:演算子列×素数列
以下の演算子列 \(\sharp_n\) を定義します。

\[
\sharp_n =
\begin{cases}
+ & \text{if } n \equiv 0\quad (\text{mod }2)\\
– & \text{if } n \equiv 1\quad (\text{mod }2)
\end{cases}
\]
さらに、\(p_n\)を \(n\)番目の素数としたとき(\(p_1= 2,\ p_2=3,\ p_3=5,\ldots\))、数列\(a_n\)は次のように表されます。
\[
a_n = a_{n−1}\, \sharp_n \, p_{n−1}
\]
よって、初項は\(a_1= 3\)であるから、
\begin{align*}
a_2&= 3 + 2 = 5,\\
a_3&= 5 − 3 = 2,\\
a_4&= 2 + 5 = 7,\\
a_5&= 7 − 7 = 0,\\
a_6&= 0 + 11 = 11,\\
a_7&= 11 − 13 = −2,\\
a_8&= −2 + 17 = 15.
\end{align*}

問題4:12, 13, 35, 58, 78, 923, ?, ?

解答:1511, 1368
分類2+分類1の混合型
各項を \(a_{n,1},\ a_{n,2}\) に分解し、インデックスの偶奇で異なる漸化式を適用します。

\(n \equiv 1(\text{mod }2)\) のとき:
\[
\begin{align*}
a_{n,1} &= 2a_{n-2,1} + 1 \\
a_{n,2} &= a_{n-2,2} + 3
\end{align*}
\]

\(n \equiv 0 (\text{mod }2)\) のとき:
\[
\begin{align*}
a_{n,1} &= a_{n-2,1} + 4 \\
a_{n,2} &= 3a_{n-2,2} – 1
\end{align*}
\]

最後にこの2数を結合して1つの項に結合します(例:15と11 → 1511)。

問題5:1/2, 1/3, 2/5, 3/7, 5/11, 8/13, 13/17, ?

解答:21/19
分類2:異種列の結合
この数列は、分子がフィボナッチ数列分母が素数列から構成されています。

分子列(フィボナッチ):1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, …
分母列(素数):2, 3, 5, 7, 11, 13, 17, 19, …

あとがき

Maksimが夕暮れの窓辺で目を閉じ、静かに本を前に思索を続けている。
「思考はまだ終わらない」──構造の森は、静かに続いていく。

今回の記事では、「数列」を単なる数の並びとしてではなく、その背後にある構造や生成原理に着目することで、新たな視点からのアプローチを試みました。

特に分類2や分類3のように、数値を分割・結合したり、演算子と数列をセットで扱うといった手法は、一見変則的に見えつつも、そこには明確な構造的秩序が存在しています。

筆者自身も、こうした構造に気づいた瞬間に「あ、これは数列じゃなくて構文なんだ」と感じることがありました。まるで数学と言語の間を行き来しているような、不思議な感覚です。

もちろん、ここで紹介した分類や問題はすべてが完成されたものではありません。むしろこれは「思考の入り口」に過ぎず、読者の皆さん自身の手で新たな構造を見つけていただくことこそが、本質的な知性の育成につながると考えています。

これからも「思考の構造化」というテーマで、より複雑で、より抽象的な問題にも挑んでいく予定です。次回以降も、ぜひ一緒に構造の森を探索していきましょう。

このシリーズの他の記事は、以下の専用ページにまとめてあります:

【特集】IQテスト構造解説シリーズまとめ

もしこの構造が響いたなら、ぜひ他の章へも足を運んでみてください。
知性の森は、いつもその先に続いています。
一歩先の構造へ、あなた自身の足で踏み出してみてください。

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